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気になるバイクをピックアップ!in御宿 vol.00(プレオープン号) 後篇

みなさんこんにちは。カイザーベルク御宿・月の沙漠支配人の脇阪です。
今回は新シリーズ「気になるバイクをピックアップ!in御宿」プレオープン号の後篇をお送りします。
 
当方に来てくださった話題のニューマシンや往年の名車などを取り上げて紹介するというのがこのコーナーです。
 
プレオープン号でご紹介するのは、2020年式のカワサキのアドベンチャーバイク・ヴェルシス1000SEです。
 
前篇ではヴェルシス1000SEの外観的な特徴について触れましたが、後篇ではエンジンや車体等のメカニズムについて触れていきます。
 
まずはメーターからです。
 
 

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ヴェルシス1000SEのメーターは、アナログのタコメーターとフルカラーTFT液晶のパネルで構成されています。
 
液晶パネルは前篇でも触れた通り2種類の表示パターンに切り替えられます。
 
上の写真は私が個人的に「スポーツモード」と称している表示パターンで、速度・時計・燃料・水温・外気温・サスペンションのプリロード設定・ギアポジション・そして電子制御ライディングモードの状態が固定で表示されます。
 
メーター中央下部はオド・トリップに加えて車体の傾き具合(リーン角)・リーン角の左右最大値を選択して表示できます。
 
上の写真の液晶の赤い部分にバイクを上から見たような絵と、その右側にタコメーターのラインに合わせて伸びている2本のラインが見えると思いますが、こちらはバイクの絵がバイクの加速・減速を表すインジケーターで、左側のラインがスロットル開度メーター、右側のラインがフロントブレーキ入力度メーターです。
 
これらの装備は、バイクの立体的な動きを測る6軸IMU(慣性計測装置)や電子制御スロットルを搭載したバイクならではと言えるでしょう。
 
ちなみにもう一つの表示モード(前篇の5枚目の写真を参照)は私が個人的に「ツーリングモード」と呼んでいるものですが、そちらはバイクの前後の傾きや操作系統の状態を表示しなくなる代わりに瞬間燃費や平均燃費、乗車時間などを表示できます(スポーツモードでもこれらの情報はメーターに記録されています)。
 
また、手持ちのスマートフォンにカワサキのアプリ「Rideology」をダウンロードし、それを経由してバイクとBluetooth接続するとアプリ側でその日走ったルートを表示してくれる他、スマホにメールや着信があった場合にこのメーターにアイコンを表示してお知らせしてくれます。
 
左ハンドルのスイッチボックスです。
 
 

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ご覧の通り非常に多くのボタンがひしめき合っております。
 
写真の正面左側のボタン列は主にメーターの各種表示内容を操作するものです。
 
また、ライディングモードの変更が可能です。
 
最新の電子制御技術をフルに生かしたこのヴェルシス1000SEでは3つのライディングモード(スポーツ・ロード・レイン)が装備されており、このボタンを操作することでトラクションコントロール・サスペンション制御・エンジン出力特性を瞬時に変更できます。
 
スイッチボックス右端のボタンの列は、クルーズコントロールのスイッチとコントロールを司るものです。
 
スロットルを開け続けなくても設定した速度でバイクが勝手に走り続けてくれるので、手首の疲れが減ります。
 
 
右スイッチボックスです。
 
右スイッチボックスは基本的にシンプルで、あるのはスライド型のキル/セル併用スイッチとメーターの選択項目呼出/決定ボタンのみです。
 

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続いてはエンジンです。
 
 

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水冷の並列4気筒DOHC4バルブで、排気量は1043cc。
 
最高出力は120ps/9000rpm、最大トルクは10.4kg-m/7500rpmです。
 
アドベンチャーバイクでは異端ともいえるこの並列4気筒エンジンは、現在カワサキのストリートファイター「Z1000」やベストヒットスポーツツアラー「ニンジャ1000(SX)」に積まれているものと同じです。
 
このエンジンはライディングモード変更で、出力特性を2段階(フルパワー/出力約75%)に変更できます。そのため、どの場面でも不満を感じることはありません。ただ、フルパワーでも大人しくて扱いやすいようにセッティングされているため、個人的に欲を言うなら、せっかくのスーパースポーツ譲りの直4エンジンなので、さらにスロットルレスポンスを強化したスポーツモードがあってもよかったのではないかと思っています。
 
また、クイックシフター(KQS)が採用されており、これは走行中に一定の条件を満たしているとクラッチを切らなくてもシフトアップ/シフトダウンができるというものです。
 
昨今のスーパースポーツバイクに積極的に採用されているこのシステムですが、クルーズコントロール同様 高速走行時の疲労を低減するということでアドベンチャーバイクでも採用が進んでおります。
 
続いてはフロントの足回りです。
 
LEDフォグランプの上についている透明のパーツは「コーナリングライト」といって、夜間にカーブを曲がる際に車体を傾けるとそれを検知して曲がる方向をより広く照らしてくれるというものです。
 
車体の傾き度合いに応じて3つのLEDライトが順に点灯して照らす範囲を自動で広げてくれるという、まさに6軸IMUによる車体制御の賜物ですね。
 
 
 

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さて、このバイク最大の特徴は、何と言ってもカワサキの誇るセミアクティブ電子制御サスペンション(KECS)にあると思います。
 
昨今のスーパースポーツやアドベンチャーバイクにはステータスの1つとも言わんばかりに装着されているこの機構ですが、そもそもセミアクティブ電子制御サスペンションというものは、バイクの脚となり車体を支えるサスペンションが路面からの衝撃に反応して自動的に減衰力(ばねの動きの硬さ)を調節し、サスペンションの動きを制御してくれるというものです。
 
メーカーによって様々ですが、フロントフォークやリアショックアブソーバーの中に電動の減衰力調節ユニット(ステッピングモーターなど)を入れ、IMUやECU(エンジンコントロール用コンピューター)から送られてくる情報を元にサスペンションを制御するというのが一般的な構造です。
 
とりわけカワサキのKECSはサスペンションメーカー・ショーワの電子制御サスペンション「EERA」をベースにして作られており、減衰力調節用にソレノイドバルブを使用したりサスペンション制御用コンピューターを設けるなどして制御能力を向上させ、抜群の反応速度とライダーにとって自然で快適な動きを実現しているのが特徴です。
 
その反応速度は、何と1/1000秒!
 
人間にはまずわからない速度で自分が置かれている状況を判断し、即座に最適な減衰力にして車体の揺れを抑制したり、安定した走りができるようにバイクが気を使ってくれるのです。
 
勢いよくコーナーに入ったりした時には減衰力を上げて前後の脚がしっかりと踏ん張る一方、信号待ちなどで停車するときは減衰力を落として適度にフロントを沈み込ませ、しっかりと前のタイヤにブレーキの力が伝わるように勝手にコントロールしてくれます。
 
また、路面の減速帯や荒れたアスファルトの上など細かい振動が連続するような場面では、サスペンションが伸び・縮みで素早く減衰力を変更し、極力ライダーに揺れが伝わらないようにもしてくれます。
 
以前まで乗っていたバイクだと「ドカドカドカドカ!」と振動を感じながら走っていた減速帯でも、ヴェルシス1000SEだと「トトトトト…」といった感じで大して揺れることなく走っていけます。
 
このセミアクティブ電子制御サスペンションKECS、意識していないと効きがわからないほど自然ですが、一度味を覚えると普通のサスペンションにはなかなか戻れません。
 
2010年前半に一時「大型アドベンチャーバイクブーム」といえるものが訪れ、BMW・R1200GSアドベンチャーやトライアンフ・タイガーエクスプローラー、ヤマハ・XT1200Zスーパーテネレといったマシンが続々とデビューし、しのぎを削っていました。
 
その後2010年代半ばになってブームは一旦落ち着いたように見えましたが、最近ではスーパースポーツバイクで培った技術を転用したハイテクアドベンチャーバイクが登場し、さらにホンダ・CRF1000Lアフリカツインといったヒットモデルも登場してその熱は再び盛り上がりを見せています。
 
400・250クラスでもホンダ・400Xやスズキ・Vストローム250といったアドベンチャーバイクのコンセプトを組む中型バイクが登場しており、アドベンチャーバイクはより多くの人々に浸透していきました。
 
とりわけヴェルシス1000は2012年のデビュー以来、2気筒が主流というアドベンチャーバイクのセオリーから離れた並列4気筒エンジンに17インチホイールを装備し、「異色」の存在として知られていましたが、これはオンロードメイン派のロングツーリングライダーに支持され、現在に至ります。
 
 
 
さて、今回の「気になるバイクをピックアップ!in御宿」のプレオープン号はいかがでしたか?
 
不定期の連載となりますが、こちらのブログシリーズを発表した時はぜひ読んで楽しんでもらえるといいなと思っております。
 
それではまた、正式開催の際はどうぞお楽しみください。

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